既発行の種類株式の変更登記
今回、既に種類株式を発行している会社様から、種類株式の内容を変更し、①既発行の種類株式の廃止、②新たな種類株式の新設、③発行済みの他の種類株式を新たな種類株式へ変更する、というご相談がございましたのでその登記手続きについてご紹介させて頂きます。
仮に、「普通株式」、「A種類株式」、「B種類株式」の3種類の種類株式を発行している非公開会社で、定款には会社法第199条第4項や第322条第2項の種類株主総会の決議を要しない旨の規定はなく、普通株式の株主は甲さん(100株)、A種類株式は全て自己株式(100株)、B種類株式の株主は甲さん(50株)及び乙さん(50株)とします。
この場合で、既存のA種類株式を廃止して普通株式とし、新たにA種類株式という同じ名称で内容の異なる種類株式を新設、その後、B種類株式のうち甲さんが所有するB種類株式を全て新設したA種類株式に変更します。
手続
この変更を行うための手続としては、まず、既存のA種類株式を廃止して普通株式化し、新たなA種類株式を新設する定款変更決議を「株主総会」及び各「種類株主総会(要否の検討は省略)」により行います。
これにより、既存のA種類株式は普通株式となり、普通株式は、甲さんが元々所有していた100株に加えて自己株式100株の合計200株が発行済の普通株式となり、新設したA種類株式は未発行の状態になります。
その後、甲さんが所有するB種類株式50株を新たなA種類株式への変更する手続を行うことになります。この手続は、①会社と甲さんの合意②Bさんの同意③B種類株式以外の種類株式にかかる種類株主総会決議により行います。なお、この方法は明文化されておらず先例によるものです。
<まとめ>
第一段階
◆A種類株式の廃止(普通株式化)と新たなA種類株式の新設
- 株主総会による定款変更決議
- 各種類株主総会による定款変更決議(各要否の検討については省略)
第二段階
◆甲さん所有のB種類株式(50株)を新たなA種類株式へ変更
- 会社と甲さんとの合意
- 甲さん以外のB種類株主である乙さんの同意
- その他の種類株主総会による決議として普通株式にかかる種類株主総会決議
登記手続
上記変更登記を行う手続と致しましては下記のとおりです。
- 発行済株式の総数並びに種類及び数の変更
- 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更
この変更により、「発行済株式の総数並びに種類及び数」は下記のように変更されます。
<変更前>
- 発行済株式の総数 300株
- 各種の株式の数 普通株式100株 A種類株式100株 B種類株式100株
<変更後>
- 発行済株式の総数 300株
- 各種の株式の数 普通株式200株 A種類株式50株 B種類株式50株
添付書類
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 各種類株主総会議事録
- 各種類株主総会にかかる各種類株主リスト
- 会社と種類変更を行う株主間の合意書
- 種類変更を行う種類株式にかかる他の種類株主の同意書
- 種類株主の同意にかかる種類株主リスト
- 種類変更する種類株式以外の種類株式にかかる各種類株主総会議事録
- 各種類株主総会にかかる各種類株主リスト
- 登記委任状
登録免許税
- 発行済株式の総数並びに種類及び数の変更
- 発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更
いずれの変更登記も登録免許税表上の区分が同一であるため、登記を一括して行う場合、登録免許税は金3万円となります。