株主総会・取締役会の開催と新型コロナ対策

株主総会も取締役会も、原則としては一堂に会して開催されることが想定された手続ですが、現在にように疫病が発生している中では、人が集まることを可能な限り回避すべきと存じます。

とはいえ株式会社においては、事業年度の末日を3月31日とし、その後2ヶ月ないし3ヶ月以内に定時株主総会を開催する旨を定款に定めている会社が多いものと存じます。そして、定時株主総会を開催するためには、その前提として取締役会も行わなければなりません。

そこで、できるだけ人的な接触を避けて株主総会や取締役会を開催する方法をピックアップさせていただきます。

株主総会

議決権の代理行使(会社法第310条)

株主総会を開催するにあたり、株主に対して招集通知と共に委任状も合わせて同封することがむしろ一般的であるものと存じます。株主総会に出席しない株主は、委任状に各議案に対する賛否等を記入の上、代理人を株主総会に出席させて議決権を行使することが可能です。

定款において、この代理人は「議決権を有する他の株主1名に限る」と規定されていることが多く、状況を鑑み、委任状による出席を促すことで、実開催とはなるものの、株主総会に実際に出席する株主の方の人数を絞ることができます。

なお、株主が白紙で委任状を提出した場合は、議決権の行使を会社の指定した者に委ねる取り扱いになります。

書面投票・電子投票(会社法第298条第1項3号、4号)

議決権を行使できる株主が1,000名以上いる会社や上場企業は、書面投票による議決権行使ができる旨を原則として定めなければなりません。

その他の会社においても、株主総会開催のための取締役会において、出席しない株主が書面投票・電子投票により議決権を行使することができる旨を定めることで、書面投票や電子投票による議決権の行使が可能となります。

ただし、株主総会の招集手続について下記2点に注意が必要です。

  • 招集通知の発送時期:会日の2週間前まで(中14日=15日前まで)
  • 招集通知の送付に際し、「株主総会参考資料」「議決権行使書面」の交付ないし電磁的方法による提供が必要

書面投票による場合は、上記「議決権行使書面」によって郵送で議決権を行使し、電子投票による場合は、ウェブサイト上で、株主ごとに付与されたID・パスワードを用いて投票を行うことが一般的です。

この方法を利用する場合も実開催とはなりますが、実際に出席する株主の方の人数を抑制することが可能です。

書面決議(会社法第319条、320条)

定時株主総会における決議および報告を書面によって行い、実開催を省略する手続です。

一見すると最も人的接触の少ない手続ですが、株主全員の書面または電磁的記録による同意が必要となるため、外部の株主の方がいる場合や株主の方が多数いる会社の場合は難しいものと存じます。

なお、経済産業省ウェブサイトにて、新型コロナウイルス感染防止のための入場制限や事前登録制による優先入場などについて「株主総会運営にかかるQ&A」や、「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」が公表されておりますので、あわせてご参照ください。

⇒ 経済産業省「株主総会運営にかかるQ&A」

⇒ 経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」

取締役会

電話会議・テレビ会議・web会議

電話会議やテレビ会議方式による取締役会の開催については,既に、法務省により、一定の要件の下で許容されております。

一定の要件とは、テレビ会議につき「各取締役の音声と画像が即時に他の取締役に伝わり、適時適格な意見表明が互いにできる仕組み」であること、電話会議につき「出席取締役が一堂に会するのと同等の相互に充分な議論を行うことができる」こととされています。

※テレビ会議につき、平成8年4月19日法務省「規制緩和等に関する意見・要望のうち,現行制度・運用を維持するものの理由等の公表について」

※電話会議につき、平成14年12月18日法務省民商第3044号民事局商事課長回答

ウェブ会議システムによる取締役会の開催も、通信状態の安定性が不可欠な要素となりますが、上記を要件を満たす事で可能であるものと存じます。

なお、これらシステムを利用して取締役会を開催した場合であってもあくまで実開催とされ、取締役会議事録には、各取締役の出席状況へのこれらシステムを利用して出席した旨の記載などが必要となります。(会社法施行規則第101条第1項1号)

書面決議(会社法第370条)

会社法第370条は下記のように規定しております。

取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

また、会社法372条第1項は下記のように規定しております。

取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない。

これらの規定に従い、書面のやり取りによって取締役会の実開催を省略して、決議や報告があったものとみなすことができます。

注意すべき点と致しましては下記のとおりです。

  1. 決議の省略については定款規定が必要であること
  2. 議決権を行使できる取締役全員の同意および監査役に異議がないことが必要であること
  3. 会社法363条第2項の規定による、代表取締役及び業務執行取締役による3ヶ月に1回以上の職務執行状況の報告は書面による通知をもって省略することができないこと

上記3により、取締役会設置会社においては、少なくとも3か月に一回以上、取締役会を実開催する必要があります。そのため、取締役会に開催においては、防疫の観点からウェブ会議システム等の導入をご検討すべきものと存じます。

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