認知症になってしまうと

民法第3条の2の規定には、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」

このため、重度の認知症となってしまった方が法律行為を行っても無効となってしまうため、不動産の売買や賃貸借契約、預金の解約、生命保険の加入や解約、遺言書の作成や生前贈与、遺産分割協議、介護施設との入所契約等、様々なことがご自身ではできなくなってしまいます。

このような場合には、成年後見制度がありますが、この場合、成年後見人は家庭裁判所によって選任されるため、ご家族の方やご自身が信頼している方が選ばれるとは限りません。

任意後見とは

任意後見とは、将来、認知症等判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめ、後見人になって頂きたい方との間で公正証書による任意後見契約を締結し、生活や療養看護、財産管理に関する事務を委託し、それに関する代理権限を与える制度です。

「任意後見契約に関する法律」によれば、以下のよう定義付けられております。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。

一 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。

二 本人 任意後見契約の委任者をいう。

三 任意後見受任者 第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいう。

四 任意後見人 第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された後における任意後見契約の受任者をいう。

任意後見と成年後見の違い

▮ 開始時期

任意後見:契約を前提として、判断能力低下後、家庭裁判所による任意後見監督人選任により開始

成年後見:判断能力低下後、家庭裁判所による後見開始の審判により開始

▮ 後見人の選任

任意後見:契約により自由に決定

成年後見:家庭裁判所が選任

▮ 被後見人による法律行為の取り消し

任意後見:不可

成年後見:可 ※日用品の購入その他日常生活に関する行為を除く

▮ 後見人の権限の範囲

任意後見:契約により自由に決定 ⇒ 契約の対象外のことはできません

成年後見:本人の利益になることを行う ⇒ そのため、以下のようなことは原則できません。

相続税対策等の生前対策  相続人の利益であり本人の利益ではないため
投資など資産運用 利益を得る可能性もあるが財産を失う可能性もあるため

任意後見の流れ